太陽光発電システムを設置すると、電力会社から通常の「電気使用量の明細」と共に「受給電力量のお知らせ」が送られてきます。
これによって電力会社から供給された電力量(受電電力量、ここでは買電電力量とします)と電力会社に売った電力量(逆潮流電力量、ここでは売電電力量とします)が分かります。
しかしながら太陽光発電システムを設置して一番知りたいのは、いったいどれだけ発電したか、それによって電気代がどれだけ節約できたかではないでしょうか。
実は買電電力、売電電力というのは設置者にとってあまり意味のない数値です。例えば、ある日の電力パターンが図1のようであったとして
、消費電力のうち1kWhは夜間の掃除機によるものであったとします。これを図2のように昼間に掃除をしたとすると、買電電力、売電電力はそれぞれ1kWh減ります。
すなわち掃除や洗濯を夜にしたか昼にしたか、またその時の天気が良かったか悪かったかといった、太陽光発電そのものとは何の関係もないことによって変わってしまう値であり、
このことからも買電電力、売電電力は、設置者にとってはその差以外はあまり意味のない値(電力会社にとっては大変意味のある値ですが)である事がお分かり頂けると思います
それから、発電電力だけでなく、消費電力も計測することをお勧めします。まず、地球環境への貢献、CO2の削減効果という意味では、太陽光発電によって1kWh発電するのも、消費電力を1kWh節電するのも全く同じ事です。また発電量は設置してしまえば後はお天気次第でどうしようもありませんが、消費電力は自身である程度コントロールできます。せっかく太陽光発電を設置しても、無駄な電気をどんどん使ってしまったのでは何の意味もありません。太陽光発電を設置する事により電気に対する意識が高まり、節電効果があると言われています。その意味でも発電だけではなく、消費電力も計測してそ< のパターンを検証することは有意義です。(図4参照)
◆二酸化炭素削減量
太陽光発電による(化石燃料を用いた発電電力を使わないことによる)二酸化炭素の削減量です。
(換算係数は平成11年度係数による)
二酸化炭素削減量[kg-CO2] = 発電電力量[kWh]×0.36
◆設備利用率
一般の発電所の性能を表す指標として設備利用率があり、太陽光発電でもこの指標を用いる事があります。
設備利用率[%] = 年間発電電力量[kWh]/(太陽電池容量[kW]×365日×24時間)×100
設備利用率は設置場所、設置状況、気象条件など、全ての条件を含んだ運転効率であり、条件が良くても約12%程度にしかなりません。これは原子力や火力発電所と比べると当然ながらかなり低い値となりますが、太陽光発電の場合、夜間まで計算に入れてそのまま比較するのは不公平な気もします。さらに傾斜面日射量を計測すると次のような解析が行えます。傾斜面日射は太陽電池と同じ面に設置し、その面の受ける日射の垂直成分を測定するものです。
◆システム効率
理論的な発電量に対しての実際の発電量の比率です。
システム効率[%] = 発電電力量[kWh]/(太陽電池容量[kW]×傾斜面日射量[kWh/㎡])×100
太陽電池容量は日射量が1.0kW/㎡の時の発電量ですので、理想的には100%となるはずですが、
前回ご説明したように太陽光発電システムとして温度特性や、汚れなど数々の低減要因があり80~90%程度となります。
月毎のシステム効率を求めれば、温度との関係など、低減要因が解析できるかも知れません。
◆PV効率
太陽電池の受けた全ての日射エネルギーに対してどれだけ発電したかを表すもので、
太陽電池モジュールの変換効率(日射エネルギーをどれだけ電気エネルギーに変えたか)を表します。
PV効率[%]= 発電電力量/(太陽電池面積[㎡]×傾斜面日射量)
太陽電池モジュールの変換効率は各型式毎に異なりますが、カタログに記載されています。
その他にも、温度を計測すれば、温度の発電量に対する影響、パワーコンディショナの入力側の直流電圧電流を計測すれば、
パワーコンディショナの性能を解析する事が出来るなど、太陽光発電システムを解析するには様々な性能指標があります。
さらに複数ヶ所のデータを計測すれば、システムや地域の違いによる比較検討が行えます。
こういった解析を計測データを基に表計算ソフトで行うのも楽しいかも知れませんが、やはり専用の解析ソフトが有れば、便利です。
システム異常の解析にも有効
太陽光発電システムの設置時にはメーカーは品質に万全を期しているとは思いますが、残念ながら中には能力をフルに発揮できていないシステムが有るのも事実です。上記で計算した指標が極端に悪く、その原因を調べたい場合にも計測データとソフトウェアが役に立ちます。図6の様に、正常に動作していれば、日射が1.0kW/㎡の時に発電電力は太陽電池容量に近い値となり、ほぼ比例した関係になります。図7の様に日射に対しての発電量が、一定時間下がっている様な場合、特にこれが毎日続いている場合には、日陰の影響である可能性が高いです。図8の様に、やはり日射に対して発電電力が追従せず、頭打ちになっていたり、変な形をしていれば、パワーコンディショナを疑ってみるべきです、故障や、調整不良が考えられます。図9の様に日射に対して発電電力は比例しているのですが、値が小さすぎるといった場合には、太陽電池そのものの不良、パワーコンディショナの故障、表面の汚れ、配線不良、などいろいろな原因が考えられますので、一度メーカーの方に確認された方が良いと思います。
このような事は詳細なデータを計測して、グラフ・帳票化して始めて分かる事です。毎月の電気料金の明細だけでは、なんだか少ないような気がするというだけで、明確な事は決して分かりません。
運転状況をビジュアルに表示
次に計測ソフトの重要な役割は、運転状況をリアルタイムで表示する事です。なにしろ太陽光発電システムには稼働部がありませんので、太陽電池を見ているだけでは発電の様子は何も分かりません。計測ソフトを用いれば、発電量や電気の流れ、故障状況などリアルタイムで、視覚的に把握する事が出来ます。また太陽光発電に関する様々な情報を表示する事が出来るなど、システムのアピールに大変有効であり、一般の方に対する啓蒙の役割も果たします。(図11参照)
今後も計測システムは重要
NEDO太陽光発電フィールドテストやJQA住宅用太陽光発電計測システムなど、これまでに多くの有意義なデータが収集され、研究開発に大いに貢献してきました。しかしながら、太陽光発電はまだまだ発展途上の技術で多くの課題があり、また次々と新しい技術が開発されています。それらの克服や検証のため、
また今後の普及促進のためにも日射や運転データなどの基礎データの収集とその解析は大変重要です。そして計測システムにおいてソフトウェアはその中核を担っており、今後さらにインターネット対応などの新しいシステムや、より高機能で使いやすいものが求められています。当社ではこれまでにも多くの計測システムを納入してまいりましたが、今後も更に機能の向上を図ると共に、風力発電やコージェネレーションなど他のシステムにも対応した計測ソフトウェアを開発し、新エネルギーの研究開発と普及促進に貢献していきたいと願っております。