はじめに......
太陽光での発電量が一年で一番多いのは何月でしょうか。正解は5月です。
なぜ、一年で一番日が長く、日射量も多い8月ではないのでしょうか。この疑問を解くカギは「パネルの温度」にあります。そこで今回は、太陽光発電に及ぼす「温度」の影響についてご紹介いたします。
パネル温度上昇の効果
太陽光発電は、太陽から地表に降り注いだ光エネルギー(日射)を電気エネルギーに変換するシステムですので、当然ながら日射量が多いほどその発電量は多くなります。
一方、日射量が多くなると、それに伴って気温や太陽電池パネルの温度が上昇しますが、太陽電池には「パネル温度が高くなるほど発電効率が低下する」という特徴があります。
これらの関係を簡易的な式で表すと、以下のようになります。
厳密には、温度が上昇すると、電流は若干上昇するのですが、電圧の低下の方がそれよりもはるかに大きいため、温度が高くなるほど電流×電圧=電力は低下し、発電効率が落ちるということになります。
図1:太陽光発電システムで発電される電流・電圧の1日の変化
図-1に、太陽光発電システムで実際に発電された電流、電圧の1日の変化の例を示しました。
これは、ある夏の1日の変化ですが、昼にかけて日射が強くなると、それに伴って発電される電流が大きくなっていくことがわかります。
一方、夏の太陽電池パネルは日中、60℃を超えるような高温となりますが、それにより電圧は抑えられ、1日を通じた電圧の変化は、図-1のように「M」字型の特徴ある形になっています。
前述の式の出力温度係数 βの値は、太陽電池が結晶系であれば概ね -0.4%/℃、アモルファス系であれば概ね -0.2%/℃ と言われています。つまり、太陽電池パネルの温度が10℃上昇すると、概ね2~4%、直流電圧が下がり、その分、発電量が目減りするということになります。
一年で一番発電量が多いのは、日射量の多い8月ではなく5月となる理由は、ここにあります。つまり、日射量の増大により発電量が順調に増えているように見えますが、その裏で、実は太陽電池パネルの温度上昇により電圧が低下し、発電効率は下がっているのです。
また、2月などの真冬に寒冷地域で太陽光発電を行う場合は、温度が低い分、発電量が上積みされ、一見、好ましいように思われますが、例えば、-5℃のもとでの出力は、標準試験条件(25℃)よりも6~12%、大きくなりますので、その結果として、接続するパワーコンディショナ(PCS)の規格を超えた、過大な電圧が発生したりする危険があります。
それ以外にも、春や秋の晴れた日は、夜間の放射現象により、太陽電池パネルが外気温より10℃以上も低くなることがあります。そのようなときは、翌朝に発電が始まると、急激に電圧が上昇することがありますので、太陽光発電システムの設計では、これらのことを考慮する必要があります。
温度の計測方法
太陽電池パネルの温度を直接計測するには、パネルの裏面に熱電対等を設置します。
熱電対というのは、異種金属の2本の導線の両端を接合して、温度を計測したい部位にその片方をつけ、もう片方を基準となる温度に保った時に、その温度差により電位差(熱起電力)が発生する現象を利用した温度計です。この計測方法によれば、正確にパネル裏面温度が計測できるため、太陽光発電の実験設備等ではよく利用されていますが、一般の発電所ではあまり用いられていません。
その代わりとして、一般的に広く計測されているのが発電所の気温です。
太陽光発電で用いられる気温計は、通常、耐候性と通気性のあるシェルターの中に計測部があり、それを太陽電池パネルの架台の下の、日陰で風雨が当たりにくいような場所に設置して計測を行います。屋根に太陽電池パネルを貼り付けている場合等、パネルの下に空間がないときには、建物の壁際等に取り付けます。このような場合は、気温計の影が太陽電池パネルにかかるようなことがないように、設置しなければなりません。
まとめ
最後に、今回のコラムの要点をまとめます。
- 1.パネル温度が上昇すると…?
- 太陽電池には、パネル温度が上昇すると電圧が低下し、発電効率が落ちるという特徴があります。太陽電池が結晶系の場合は概ね-0.4%/℃、アモルファス系の場合は-0.2%/℃と言われ、10℃の温度上昇で概ね2~4%、発電量が目減りします。
- 2.低温での太陽光発電も要注意
- 真冬の寒冷地では温度が低いため発電量が上積みされますが、その結果としてPCSの規格を超えた過大な電圧が発生する危険もあるので、これらを考慮した太陽光発電システムの設計が必要です。
- 3.太陽光発電シテスムにおける温度計測
- 熱電対を利用したパネル裏面温度の計測は正確な半面、あまり一般的ではありません。その代わりに、パネルの架台下などに気温計を設置し、外気温を計測することがよく行われています。